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日時: 2017/12/16(Sat) 18:12
名前: 匿名
すると、僕とJが話すのを黙って聞いていたYさんが
「違うの。だってみんな死に方が違うの。調べてみたけど心臓麻痺の人や交通事故の人、病気の人。殺されたとかじゃないしみんな住んでるところがバラバラなの」
僕は途方に暮れてしまいました。今までそんな例は見た事も聞いた事もありません。
「それに、ゆっくりもしてられないんだ」
Jはそう言うとYさんに目配せをしました。
Yさんは少しためらうと、バッグから何かを取り出しました。
「……!」
それを見た瞬間、僕の背中にひやっとした感覚が通りました。
いつもの嫌な感覚です。
今までそこのバッグに入ってたのに何故気が付かなかったのかというほどの嫌な感覚。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:13
名前: 匿名
それは、縁を黒く塗られたはがきでした。
「10月26日、2時00分。死亡」
と書かれていました。
「まさか……」
僕が聞くと、Yさんは頷いてはがきの宛名面を出しました。
『K○Y子 様』
宛名にはYさんの名前が書かれていました。
「このはがきだけは消えないの、他のはがきはみんなどこかに行っちゃうのに、このはがきだけはずっとあるの……」
Yさんは震える声でそう言いました。
「いつ来たの!?」
僕はそのはがきの嫌な感覚に思わず声を荒げてしまいました。
「おとといの、夜」
「なんでもっと早く相談しなかったの!? こいつは本物だよ!」
「A! A! ちょ、声が大きい」
僕の声に周りがこちらに注目しているのが分かりました。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:14
名前: 匿名
僕は中年のおっさんみたいに机にあった手拭で額を拭き、
(落ち着け、落ち着け)
深呼吸すると、どうすべきか考えました。
僕には霊をどうこうする力なんてありません。
警察に行ってもまともに取り合ってもらえる内容でもないし、警察でどうこうできる内容でもありません。
しかし話の流れから、なにもしなければYさんは今夜2時になにかしらの理由で死んでしまいます。
「ちょっと待ってて」
僕はJとYさんにそう言うと、喫茶店から外に出ました。
こんな時に頼りになるのは1人しかいません。
携帯を取り出すと、僕は爺ちゃんに電話し今までのいきさつを話しました。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:14
名前: 匿名
「……というわけなんだ、どうしよう爺ちゃん!」
「ふ〜む。そりゃ、いかんわなあ」
爺ちゃんはしばらく何かを考えるように黙りこくったあと、
「あれじゃ、前に大畔(おおぐろ)の坊主に書いてもらったお札があるじゃろ。あれをポストとドアのノブ、部屋の窓という窓に貼るんじゃ。たぶんそいつは招かれ神の類じゃ。中から招かんかぎり悪さはできんはずじゃ」
「夜中、部屋に戻らないようにしてもダメ?」
「だめじゃな。外じゃ余計にいかん。四角く封ずる門がないぶん連れていかれ放題じゃ」
僕はJとYさんに先にYさんの部屋に戻るように言い、家にお札を取りに戻りました。
大畔の坊さんというのは「かんひも」の時に僕とKを祓ってくれた坊さんです。
普段は酒飲みで肉も食べるわ嫁がいてバツイチだわ生臭さがプンプンする坊主ですが、霊験はあらたかなようです。
僕が変なモノを見るようになってから、魔よけのお札を書いて送ってくれていました。
僕はお札を取ると、教えられたYさんのアパートへ向かいました。
時刻は夜の8時でした。
部屋に入ると青ざめたJとYさんが待っていました。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:15
名前: 匿名
僕は爺ちゃんに教えられた通り、部屋中の窓と玄関のドアノブにお札を貼りました。
そして、落ち着かないまま3人で時間を待ちました。
緊張していたせいか時間が経つのはあっという間でした。
時計の針は1時55分を指しています。
「……!」
一番最初に異変に気付いたのはYさんでした。
「来た!」
震えながらYさんは自分のベッドに潜り込みました。
カッ、コッ、カッ、コッ
足音です。
同時に僕の背中に冷たい電流が走りました。ものすごく嫌な感じがします。
カッ、コッ、カッ
足音が部屋の前に止まりました。
そこで僕は重大な事に気が付きました。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:16
名前: 匿名
なんと間抜けな事でしょう! 一番肝心なポストのフタにお札を貼ってありません!
かといって今から貼る勇気はありません。
僕とJは何が投函されるのかとポストを凝視していました。
コンコン、コンコン
しかし意表をついて、ポストではなくドアがノックされました。
「K○さ〜ん、郵便で〜す」
ドアの向こうから張りの無い無機質な男の声がしました。
「K○さ〜ん、郵便ですよ〜」
ノックと声は続きます。僕たちは声を潜めて様子を伺いました。
しばらくノックと声が続いた後、ふっと音が止みました。
そして、
カッ、コッ、カッ、コッ
足音が歩き出しました。
そしてそのまま小さくなり消えていったのです。
ほっとして僕らはその場にへたり込んでしまいました。
布団に潜っていたYさんも顔を出し、安堵で泣きじゃくっていました。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:17
名前: 匿名
「ふう」
僕はため息をつくと、立ち上がりながらなんとはなしに目をドアの方へ向けました。
「……!」
僕は恥ずかしながら腰を抜かしてしまいました。
僕のただならぬ様子にJとYさんもドアの方を向きました。
ドアのポスト。
フタが上がり、ギラギラした2つの目がこちらを睨みつけていました。
「なんだ、いるじゃないかよお」
先程とは打って変わって野太いしわがれ声が部屋の中に向けて放たれました。
ガンガンガン!
ガンガンガン!
激しくドアを殴りつける音。
ガチャガチャ!
ドアノブがもげてしまいそうな勢いで激しく上下しています。
同時に部屋中の窓という窓がガタガタと音を立てて震えだしました。
「キャーーーーーーーーーーー!」
Yさんは悲鳴を上げると気を失ってしまいました。
僕とJはYさんの上に覆い被さったまま何もできずにいました。
日時: 2017/12/16(Sat) 18:18
名前: 匿名
――どのくらい時間が経ったでしょうか。
気が付くと、あたりは明るくなってきていました。音も止んでいます。
「Yさん!」
僕とJは慌ててYさんを確認しましたが、Yさんは気を失っているだけで命に別状はなさそうでした。
あれほどの騒ぎにも関わらず、1階の大家さんも隣の部屋の住人も全く夜中の事は気付いていませんでした。
Yさんはその後アパートを引き払い、別の場所に引っ越しました。それからは何もないようです。
<後日談>
なぜ変なモノがYさんのところに来たかというと、おそらくこれが原因でないかと思うのですが……。
僕は知りませんでしたが、僕らの高校では変なおまじない(お呪い)が流行っていたようです。
場所は詳しく書けませんが。ある場所のあるポストに、夜中の2時49分に憎い相手の名前を書いて縁を黒く塗って投函すると、その相手に不幸が起こるというものです。
Yさんもそのお呪いをやってしまったようです。相手はYさんの好きな先輩の彼女。
僕はあんな屈託のない明るいYさんがそんな事をしたのに驚きを隠せませんでした。
よくこのスレッドでも出てきますが、「一番怖いのは人間の心だな」と。
みなさんもお気をつけください。人を呪わば穴二つという事です。
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